2014年4月25日金曜日

A Universe from Nothing: Why There Is Something Rather than Nothing

amazon review in Japanese
(copy)
2014年3月,「宇宙の初期に起こったインフレーションによる重力波」の証拠を発見したという発表がアメリカのBICEP2グループからありました。

「インフレーション」とは,現在の所,もっとも有力な宇宙の始まりを説明するモデルです。このモデルによると,何も無かった宇宙が量子論的な揺らぎによって非常に短時間(0.0000....1秒; 10の-36乗)の間に急激に膨張(1000....000倍; 10の26乗)しました。
この理論を使わないと説明できない,いろいろな観測事実があります。

インフレーションが本当だとすると私たちの宇宙は「無」から始まったことになります。その前には,空間も時間も無かったと考えられています。そんなことが可能なのでしょうか? そもそも時間に始まりはあるのでしょうか? これらは,人類がずっと考えてきた究極の疑問です。多くの宗教や神話では,「神」が宇宙を作ったと考えます。では「神」はだれが作ったのでしょうか?これらの疑問に,最先端の技術を用いて「観測事実に基づいて」挑んでいるのが,現代の物理学者,天文学者たちです。

この本は,タイトルにある通り「無からどうやって我々の宇宙を作るか」をできるだけ分かりやすく,かつ現在の科学理論に基づき説明しようとするものです。科学的な説明に加えて,論理的にもどう考えるか,丁寧に説明しています。

著者のM.LKraussは,優れた素粒子・宇宙論研究者であり,一般向の本も何冊も書いています。

さて,本当に「無」から宇宙は作れるのでしょうか? これに科学的に答えるには,量子論と相対論が必要です。

量子論は,電子や陽子といった物質のもとになる素粒子の世界の理論です。ここでは,ある実験のエネルギーと時間は同時に正確には決められないという「不確定性原理」が重要になります。一方,アインシュタインによる相対論は,時間,空間,重力の物理です。
宇宙の始まりは,無限小の大きさであり,時間と空間の始まりなので,この二つの理論を同時に考える必要があります。アインシュタインは,この二つの理論の統合に挑みましたが,成功しませんでした。ホーキングも大きな貢献をしていますが,成功していません。
未だ,だれも成功していません。この本の主題も,この二つの統合に挑む最近の科学の成果が中心です。

さて,我々は宇宙の始まりを理解することができるでしょうか? それには,宇宙の果てに迫る非常に精密な観測が必要です。さらに,科学の常識を覆す新しいパラダイムを生み出す,ニュートンやアインシュタインに匹敵する天才が必要です。

昔の人は,「地球が丸いこと」や「太陽系が天の川の中にあり,宇宙には天の川のような銀河が大量にある」ことを知りませんでした。同じように私たちが知らない「別の世界」が存在するでしょう。もしかしたら,「我々の宇宙」以外に沢山の「宇宙」があるかもしれません。あるいは,我々の知っている4次元の世界は,実はより高い次元の世界の一部かもしれません。例えば,「超弦理論」や「M理論」がこれらを考えています。

この本は,このような現代の宇宙論を理解するきっかけになります。

なお,私も20年以上に渡り,宇宙を理解しようと日々働いていますが,未だ謎だらけです。

S.Hawking, 「A Brief history of Time」,「ホーキング,宇宙を語る」
S. Weinberg,"The first three minutes" ,「宇宙創成、最初の3分」




0 件のコメント:

コメントを投稿