2014年9月11日木曜日

銀河団外縁部のエントロピー異常の原因の検証

栗山 翼(東京理科大学)
2014-9-11 

http://www.asj.or.jp/nenkai/2014b/T.html
天文学会


銀河団は大規模構造からの質量降着によって現在も成長していると考えられている。宇宙論的シミュレーショ ンでは、質量降着時の衝撃波によってエントロピーは半径の 1.1 乗に比例して上昇すると考えられていた。しかし 「すざく」衛星による銀河団外縁部までの観測からエントロピーは r500 までしか上昇せず、以降はほぼ一定の値 となることが確認された (e.g., Sato et al. 2012)。 異常の原因の一つとして外縁部の高温ガスの密度むらによっ て密度を過大評価していることが挙げられている (Simionescu et al. 2011)。降着してきたガス塊が銀河団ガスと 十分混ざっていない場合外縁部のガス密度にはむらが生じる。そのためガス塊の存在が確認出来れば密度が受ける影響を評価し得る。ガス塊が十分大きく明るい場合周囲よりも明るい X 線源として観測出来る可能性がある。 近傍の中規模銀河団Abell 2199 (z=0.03, kT=4 keV)は南北に延びるフィラメント上に位置しており、外縁部 でのエントロピー異常を我々は既に報告した (佐藤他、2012 年春季年会)。今回、Abell 2199 銀河団の外縁部に ついて「すざく」衛星によるビリアル半径付近までのマッピング観測に加えて「XMM-Newton」衛星でフィラ メント方向を含む 2 領域を新たに観測した。銀河団外縁部での X 線点源数 (logN-logS 関係) Lockman hole, COSMOS 領域など、明るい天体のいない領域と比較したところ両者と良く一致した。ただし、検出された X 線 源について詳細なスペクトル解析を行ったところ、少数ながら1-3 keVの熱的プラズマからのスペクトルを示すX 線源が存在した。本講演ではガス塊による密度むらがエントロピーにどれだけ影響し得るかについて議論する。 

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